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2011年5月17日 (火曜日)

満月の出は大きく見えるのか?

月や太陽が地平線に近いときには、仰角が大きいときよりも、視直径を大きく感じます。どの月齢でも起こる現象ですが、とくに満月は満ち欠けという意味でも大きいうえ、午後6時ごろに上るので帰宅中に目にすることも多く、「今日の満月は大きいなあ」と感想をもたれることが多いようです。

実際に、月の軌道が少し楕円なので地球との距離が変わり、近地点と遠地点とでは1割ほど見かけの直径が変化します。しかし、一晩のうちで上る時だけ大きく見えることの説明にはなりません。目の錯覚であることは確かなのですが、どの種の錯覚なのか諸説あります。有力な説は、「周囲にある風景との対比」「天球の形状を扁平に感じている」「色のせい」など。錯覚については、
The Moon Age Calendarというサイトの
Main >> Inquiry >> Moon FAQ
地平の月が大きく見える
というページの解説がお勧めです。

論より証拠。錯覚なら視直径を計測すればいいのです。簡単な方法として、5円玉か50円玉を持ち、腕を伸ばして穴から月を見てください。ほぼぴったり収まるはずです。これを月の出と、南中時に比較すれば、視直径が変わらないのがわかるでしょう。もうすこし定量的に証明するため、写真を撮ってみましょう。

これは私が今夜の満月を同じカメラ、同じレンズで撮影したものです。

同じ写真をTwitPicにも公開しています。

上の写真が、上ったばかりの20時ごろ。(電線が写っています)
画像上の直径は約306画素。
下の写真が、じゅうぶん高く上った23時ごろ。
画像上の直径は約309画素。

本当は焦点距離1000mmくらいほしいのですが、手持ちのズームレンズで最長側の200mmにして、画面の中央に小さく写った月を、本来の解像度のままトリミングしたものです。画像から直径を測定する精度は±1画素くらいでした。安価なデジカメでも、最大望遠にして三脚で固定すれば、月の視直径を比較できるくらいには撮れます。

この計測の結果、視直径はほとんど変化なし。
いや厳密には、むしろ逆に低空の月の方が小さいの?
これは誤差ではありません。地球の半径のせいです。日本あたりだと、地球半径×COS(緯度)=約5000km、月の出没時より南中時のほうが月に近いのです。このため視直径が最大で1%強、大きく見えます。肉眼ではわかるほどではありません。

@kazufukudaさんも同じ月を、もっときれいに撮影されています。


ところで、私が気になるのは、しばしば「低空での大気の屈折のため」という説を聞くこと。その原理では横方向に伸びる説明ができません。むしろ屈折による浮き上がり効果は低空ほど強いので、縦方向に縮みます。沈む夕日が横長につぶれて見えた記憶はありませんか。屈折説を唱える人は、思考だけでなく、いちど実測してみればいいのに、と思います。5円でできますから。

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航空・宇宙・天文」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰しております。

見かけの大きさ、
自分も昨年やってみましたので、どうぞ。
http://blog.syo-ko.com/?eid=686
 

投稿: rockecco | 2011年6月 7日 (火曜日) 18:15

ロケッこさんの写真でも、南中時のほうがわずかに大きいように見えますね。

投稿: ひらやま | 2011年6月 8日 (水曜日) 00:32

一昨日、快晴で満月がきれいでしたので、
実験(?)してみました。

やはり、南中の方がやや大きくなりますね。
やってみるとなかなかおもしろいです。

http://blog.syo-ko.com/?eid=1217

投稿: rockecco | 2011年7月17日 (日曜日) 17:24

twitterで宣伝ありがとうございます

昨日中秋の名月もきれいでしたので、撮影してみました。

投稿: rockecco | 2011年9月13日 (火曜日) 14:23

3日にこの見かけの変化による日食、
ハイブリッド日食が起こります。
是非ライブ中継等でお楽しみください。

投稿: rockecco | 2013年11月 2日 (土曜日) 21:08

ロケッこさん、ライブの情報ありがとうございます。
そういえば金環皆既日食も、この記事の現象が関係していますね。

投稿: ごんざぶろう | 2013年11月 3日 (日曜日) 16:32

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» 月の見かけの大きさを測る〜その2 [ロケッこがゆく]
以前、月の大きさは月出のころと、南中の頃は同じ大きさなのか?について実際に写真撮影して、その大きさは変わらないという記事を書いたが、その第2弾たいていの場合、月が出る頃の方が大きく見えるというのが、一般的なのだが、先日、ごんざぶログさんのところで、むしろ南中の方大きいのかもしれないという内容の記事があったので、おもしろそうなので試してみた。まずは、月出から月入までの写真(夜明け前2時間はつい寝てしまってありません・・・)20時 満月が昇りはじめてややたった頃21時 だんだんと南の空へ昇る22時 今日... [続きを読む]

受信: 2011年7月17日 (日曜日) 20:27

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受信: 2011年9月13日 (火曜日) 14:20

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以前、月の見かけの大きさについて書きましたが、 その見かけの大きさによる面白い天体ショー、 ハイブリッド日食 の日がいよいよ3日に迫って参りました。 といっても、実際には同時に見られるのは難しく(ある場所では金環、ある場所では皆既)、 また、今回の遷移点(金環rarr;皆既)は海上であるため、 船か何かを使わなければ観測することはできません。 ちょうどお休みと言うことで、中継はLIVE! ECLIPSE 2013等を見ながら世紀の天体ショーをお楽しみください。... [続きを読む]

受信: 2013年11月 2日 (土曜日) 21:05

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