風雲デブリ vs だいち (交差高度差の期待値)
新聞に紹介された1.4kmという数字の意味がわかりにくいので、ちょっと補足します。(これを紹介してくださってる、ブログや2chスレでも、数字が一人歩きしがち。)
2月1日のデータ(軌道要素)では最接近軌道が高度差384mで交差。
2月7日のデータでは、その物体は高度差40kmまで離れ、別の物体が1356m差で交差。
と、個々の物体との交差高度差はまだ安定しませんので、これらの数値はたいした意味がありません。
朝日新聞の記者さんにも、その点は理解していただいて、記事では
南極上空に同時期に来ない限り衝突の危険は少ないが、デブリの軌道は刻々と変化しており、宇宙機構も監視を強めている。という表現になりました。
群としての振る舞いを見ると、±10kmで交差する物が18個、±20kmで交差するものが36個。この数値も漸増していますが、発見デブリ数に対する比率は安定しています。つまり、2月7日時点では平均的に高度1.1kmごとに交差するデブリが存在しているわけで、平均して±550m以内で1個と交差することになります。そう思うと、今回のデータの「1.4km」は大きめで、たまたま近くにいなかった状態だったようです。
昨日見たデータでは、発見デブリが700個を越えていました。そのデータではちゃんと計算していませんが、2月7日より1割増ですから、上記の数値も「±500m」くらいになっていると予想されます。
仮に高度差 0 でぴったり合っていても、同時に交差点に来なければ衝突しません。お互い、一日に軌道を約14周しますから、例えるなら「1日に車が14台通る田舎の道を、目をつぶって1日に14回横断して、はねられるようなもの」です。(本当は速度も影響します)
計算したところ、完全に高度差 0 のデブリが1個あった場合、10km以内にニアミスするのは3回/年、1km以内は0.3回/年(つまり3年に1回)、100m以内は30年に1回・・・・この調子で比例して、本体に衝突と見なせる3m以内は1000年に1回と予想されます。仮に高度差 0 のデブリが1000個あったら、1年に1回衝突ですね。
今のたとえ話、高度差0という仮定は問題を2次元にしているので、ニアミスとする半径に対して比例する回数となります。
現実的な、高度方向に分布した3次元モデルだと、ニアミスとする半径の球の投影面積に比例、つまり半径の2乗に比例します。毎日新聞で紹介されたように、646個のデブリのうち10km以内に38回/年ですから、1km以内は100分の1の0.38回/年(2.6年に1回)。100m以内は260年に1回・・・・3m以内は28万年に1回です。
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