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2007年2月 2日 (金曜日)

衛星破壊のニュースについて

「中国の衛星破壊実験、影響は?」(1/28 時事)
この記事の、図の使い方は不適切。
ここで引用されているNASA作製のCG(オリジナル画像はここ)は、中国の実験前の既存の物体(低軌道では数千個)をプロットしたものですが、本文の記述が曖昧で、これが中国の出したデブリ(既知517個)であるかのように誤解されます。
CelesTrakのサイトに掲載されているこちらの図を引用するほうが適切です。もっとも、その図にしても、中国のデブリを線で、既存の物体を点で示しているので不公平です。
今回のことに対して、中国の肩を持つつもりはありませんが、このような表現は、実際以上に危機感を訴え、中国非難論を煽動しているように感じます。

「中国の衛星破片、軌道にびっしり…人工衛星などに脅威」(2/1 読売)
「コンピューター画像の分析で明らかになった」って格好良く表現しているけど、CGで軌道を描かせて目視による定性的判断ってこと?それとも、マスコミ向けに分かりやすい図だけ公開して、内部ではもっと詳細な分析もしているのかな。
先の記事での私の計算も、視覚的にしか見せていませんが、衝突確率を定量的に計算した際の副産物です。

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2月6日追記
研究室のウェブサイトに、風雲1号CのデブリのCGを追加しました。
うちの助教授作製のもので、NHKのニュースで使われたらしい。
http://ssdl.aero.kyushu-u.ac.jp/?SpaceDebris%2FOrbitalAnalysis#ASAT

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コメント

記事を書いた記者が定性的理解しかできなかったのかもしれません。http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20061219.html#p01
にあるように、取材した人が努力しても、デスク(が想定している一般人)の理解力に合わせて改竄されることもあるようですね。
数学不要などと公言した大臣のように、定量評価はおろか、数字を持ち出すだけでも、非人間的/非文化的/非創造的と感じる人も多いようですし。

まあ、「この話題に関するブログ」をみると、元データの意味まで調べずに中国だけを悪者扱いしているのが大半なので、読者の嗜好にあった記事なのでしょうね。


投稿: おーの | 2007年2月 2日 (金曜日) 16:28

いえいえ、ごんざぶろう先生。これは様々な国際機関による信望深慮なのです!

<衛星破壊実験前>
C国”衛星の破壊実験やりたいんだけどー”
A国”ぉ。んじゃやらせてやるけど、ちっと情報工作に使わせて貰うからね♪”

<衛星破壊実験後>
A国”中国のデブリでISSが大変だっだっだだっっ!(うる星風に) 建設に必要となる船外活動要員の人命が危険なので、泣く泣くISSの建設中止っっ!別にISS建設参加国が悪い訳じゃないもんねっ!”
関係各国 表面上”中国さいてーっ!”
内心”やたー!これで作らなくてもおっけー!中国でかしたーーーっ!”

なんですよ、きっとw

投稿: akiaki | 2007年2月 4日 (日曜日) 13:05

大変参考になりました。これからも読ませて頂きます。

投稿: 高橋 | 2007年2月26日 (月曜日) 17:24

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» 中国の衛星破壊実験 [今日のことば]
中国の弾道ミサイルによる衛星破壊実験で発生した約10センチ以上の破片(デブリ)が地球の上空を大量に取り巻き、国際宇宙ステーション(ISS)や人工衛星が危険な状態にさらされていることが米民間分析機関によるコンピューター画像の分析で明らかになったそうです。yah..... [続きを読む]

受信: 2007年2月 2日 (金曜日) 15:19

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