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2007年2月 8日 (木曜日)

見えていない微小デブリ

(当初、下の記事に追記していた内容。加筆して、新しい記事に分けました。)

現在の技術で、地上から確実に観測できるデブリの大きさは、低軌道で10cm、静止軌道で1mと言われています。これより小さいデブリは、地上から観測できませんが、帰還したシャトルや回収された衛星の表面にできた微小クレーター(衝突痕)の分析から、その密度分布が推定されます。おおむね、サイズが小さくなると指数関数的に数が増えると予想されています。

新聞に紹介されたような既知の大きなデブリは、事前に予測して回避できるから、じつはそんなに怖くありません。むしろ怖いのはより小さくても十分な破壊力を持ち、多数存在している微小デブリです。このニュースで当初取り上げられたのはISSへの危険ですが、ISSの与圧区はホイップル・バンパーで防護され、直径1cmまでのデブリなら受け止められます。それに比べ、通常の人工衛星は無防備で、1cmでも当たれば大穴が空きます。1mmでも部分的な機能喪失や、太陽電池なら出力低下を引き起こすかもしれません。
20070201masterクリックで拡大

さて、MASTERのモデルによると、既存のデブリのALOSへのニアミスは、10cm以上のデブリの数(Cumulative Flux)にくらべ、1cm以上のデブリは約17倍、1mm以上のデブリは約2000倍の数と予測されます。
風雲1号Cの微小デブリの「サイズvs数」の分布は未知ですが、定性的には同じように、小さなデブリほど何十倍も何百倍も存在するはずです。
この問題について、うちの学生も、関連する計算や実験を行っています。

宇宙機ダイナミクス研究室:スペースデブリ/衝突実験
宇宙機ダイナミクス研究室:2006年エイプリルフール
ハルカナルミチ:破片数訂正
Tsuruday:ASAT
New Satellite Impact Experiments, The Orbital Debris Quarterly News, Volume 10, Issue 3, Page 4, July, 2006.

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おまけ:最近の記事を書いていて我ながら笑った誤変換
「微笑デブリ」    :-)
「微少デブリ」   (これは間違えやすく、気付きにくい)
「衛星破壊平気」  (気まず・・・)

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コメント

Orbital Debris Quarterly Newsは、NASA JSCのデブリ部門が、デブリ研究者むけに発行している季刊ニュース。URLを見るとわかると思うけど、略称がODQN、ドキュン入ってます。

投稿: ごんざぶろう | 2007年2月 9日 (金曜日) 15:14

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