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2006年3月 5日 (日曜日)

宇宙で「打ちっ放しゴルフ」

宇宙ステーションから「ナイスショット」?=科学者は危険と指摘
(2006/3/5 時事通信)
(抜粋)
だが、欧州宇宙機関(ESA)などの科学者たちの受け止め方は冷ややかだ。地上でさえ小さなゴルフボールを適切な力で正しい方向に打つのは難しい。まして分厚い宇宙服を着て行うのは至難の業。ミスショットとなってボールが間違った方向に飛ぶ公算が大きく、結果として図らずもISSと同じ軌道面に乗り、最悪の場合、秒速10―11キロの猛烈なスピードでISSに衝突し、損害を与える可能性もあるという。

ダウト!

危ないのは同意しますが、記事中の説明が軌道力学的に間違っています。
「同じ軌道面」と「秒速10―11キロ」は両立しません。

  • 問題としている猛スピードに比べて、摂動やISSの軌道制御の影響は小さいので無視すると、おおむね、ISSに衝突する速度は、ボールを打ちだした速度と同じになります。こんな速度で打ち出すのは人間には不可能。
  • 仮にこの速度で同じ軌道面に打ち出せたとすると、地球軌道から脱出するか、地球に落下してしまい、周回軌道には乗りません。
  • 同じことを逆に言うと、ISSと同じ軌道面で10~11km/sで衝突する軌道を描いてみると、双曲線軌道で無限遠から飛来するものか、近地点が地中に潜っている(つまり地上から打上げた軌道)でしかありえず、ISSから出発した軌道からは不可能。
  • 10~11km/sでISSに衝突するのは、ISSと同じ軌道面ではなく、直交する軌道へ打ち出した場合。ただしこれには、ISSから見て相対的に、斜め後方へ約15km/sで打ち出す必要があります。

10~11km/sというのはISS自身に対してでなく、他の軌道面を飛行する宇宙機に対する衝突速度の平均値と一致します。このニュースが参照している科学者はこの数値を言っていたのではないだろうか。原文を見てみたいものです。

先日、ISSから放出したSuitSat-1にも、軌道力学的に同じことが言えます。

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