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2005年11月 8日 (火曜日)

弾道飛行のΔVと到達距離

これは、野尻ボードで話題になっていたロケット旅客機の議論に、定量的な資料を示すために描いたグラフのアップロード場所のために作った仮の記事。出来る/出来ない、の根拠が直感的・感情的で、議論が荒れそうな兆しがあったので、定量的にΔVを計算してみせたものです。当初、文章なしで不可視の記事でしたが、ついでに解説を加えて公開します。
11月8日 グラフだけアップロード
11月18日 本文追記して公開

仮定した力学モデルはもっともシンプルなもの

  • 地球と飛翔体を質点とする2体問題
  • 打上の加速は瞬間で行われる
  • 地球の自転・偏平性・大気の影響は無視
つまり、近地点が地中に潜っている楕円軌道の遠地点前後を飛行する形になります。

R:地球の半径(6378 km)
V1:第一宇宙速度(7906 m/s)

L:発射点から着地点までの地表距離
θ:地球を中心として、発射点から着地点までの角度
 θ=L/R [rad]
γ:発射時の上昇経路角
ΔV:発射時の増速度

こうすると、発射時のΔVは式1で与えられます。
発射点と着地点を決めても、もうひとつ軌道の離心率の自由度があり、これは発射時の上昇経路角γで決まるので、ΔVを最小とするγで打ち上げることにします。すると最小のΔVは式2となり、これを与えるγの値は式3です。θが十分小さいときにはγ=45°で、高校物理の常識と一致します。地球の裏側を目指してθ=180°のときには、γ=0,ΔV=V1となり、理論上は地表すれすれの衛星軌道です。

20051108ballistic_flight_eq

20051108ballistic_flight
横軸は目的地までの距離L(単位km)
縦軸は発射時の増速度ΔVmin(単位 m/s)

距離1万kmで太平洋横断するのにも、第一宇宙速度に近いΔVが必要なのがわかります。
また、この計算はICBMとも同じなので、米ソの宇宙開発競争の初期、ICBMとして開発された機体の上段にちょっとキックモーターを追加して、人工衛星としたこともうなづけます。

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