弾道飛行のΔVと到達距離
これは、野尻ボードで話題になっていたロケット旅客機の議論に、定量的な資料を示すために描いたグラフのアップロード場所のために作った仮の記事。出来る/出来ない、の根拠が直感的・感情的で、議論が荒れそうな兆しがあったので、定量的にΔVを計算してみせたものです。当初、文章なしで不可視の記事でしたが、ついでに解説を加えて公開します。
11月8日 グラフだけアップロード
11月18日 本文追記して公開
仮定した力学モデルはもっともシンプルなもの
- 地球と飛翔体を質点とする2体問題
- 打上の加速は瞬間で行われる
- 地球の自転・偏平性・大気の影響は無視
R:地球の半径(6378 km)
V1:第一宇宙速度(7906 m/s)
L:発射点から着地点までの地表距離
θ:地球を中心として、発射点から着地点までの角度
θ=L/R [rad]
γ:発射時の上昇経路角
ΔV:発射時の増速度
こうすると、発射時のΔVは式1で与えられます。
発射点と着地点を決めても、もうひとつ軌道の離心率の自由度があり、これは発射時の上昇経路角γで決まるので、ΔVを最小とするγで打ち上げることにします。すると最小のΔVは式2となり、これを与えるγの値は式3です。θが十分小さいときにはγ=45°で、高校物理の常識と一致します。地球の裏側を目指してθ=180°のときには、γ=0,ΔV=V1となり、理論上は地表すれすれの衛星軌道です。
横軸は目的地までの距離L(単位km)
縦軸は発射時の増速度ΔVmin(単位 m/s)
距離1万kmで太平洋横断するのにも、第一宇宙速度に近いΔVが必要なのがわかります。
また、この計算はICBMとも同じなので、米ソの宇宙開発競争の初期、ICBMとして開発された機体の上段にちょっとキックモーターを追加して、人工衛星としたこともうなづけます。
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