H-IIA 7号機打ち上げ観望 道中記 (後編)
【分かれ道】
鹿屋を過ぎると大隅半島は南西に向かって伸びています。鹿児島湾側の海岸線も南南西むきで、海岸線の近くまで山地が迫っていて、南東の見晴らしが悪い。こんなところを走っている最中に打ち上げられてしまったら元も子もありません。このへんまでくると大隅半島もだいぶ細くなってくるので、半島を横断できる道があるところで東海岸へ出てしまえば、佐多岬のほんとうの先端にこだわらずともよいです。南にある種子島から東へロケットが飛ぶのに対し、半島の先端は南西へ延びているので距離はそれほど縮まるわけでもないから。
この先、半島の東へ抜ける道への分岐点は、大根占町と佐多町の2箇所、佐多岬の先端まで行けた場合も数えて選択肢は3つ。打ち上げ時刻と車の進行速度を見積もって、正確な判断と、ナビゲーター(妻)との連携プレーが求められるところ。(妻は地図が読める女です。)
17時半ごろ、大根占の分かれ道の手前で再び携帯で宇宙作家クラブの掲示板で最新情報をチェック。投稿No.843の松浦さんの記事で「午後6時25分打ち上げで作業再開」と知る。ここはまだ直進してよさそうだ。
【ネッピーの里・根占町】
根占町に入るころには、あたりが薄暗くなってきました。西の方には、鹿児島湾ごしに薩摩半島先端の開聞岳(薩摩富士)が美しいシルエットを見せています。
根占の市街地に入ると、いたる所に町のキャラクターらしい、龍のような「ネッピー」が描かれています。池田湖のイッシーの仲間かと想像し、
「ネッピーってこの川に出る怪物かな。日本人ってば、ネス湖(Loch Ness)のネッシー(Nessie)にあやかって、湖の怪物をなんでも○○シーにしちゃうけどさ、あれは語尾の S を伸ばしたからで、屈斜路湖のクッシーまではわかるよ、池田湖ならイッシーよりイッキー(Ikkey/Ikkie)にすべきだったんじゃない? で、ネッピーのピーて何だよ?」などと茶々を入れながら通過する。(あとでネッピーに詫びる)
【佐多町】
九州本土南端の佐多町に入る。漁村らしいたたずまい。
18時頃、最後の分かれ道。直進して佐多岬の先端へ行くには時間が足りなそうです。そのうえ本当に本当の先端は有料道路で、17時までしか入れないようだから、先端にこだわることもなく、ここで山を越えて、東海岸に出ることにしました。もし海岸線までたどり着けなくても、途中の峠さえ越えて見晴らしの良い場所を探せば十分見えるでしょうから。
ヘアピンの山道を走ること15分、山を越え東海岸の小さな平地に出ました。水田地帯らしいところを直線に突っ切る道を走り、ようやく海岸線に出ました。そこから道は海岸沿いとなり、地図によるともうすぐ行き止まりというところで、ちょうど良い駐車場を見つけて停めました。このとき18時23分、打ち上げ2分前!!
【打ち上げ&撮影裏話】
(2月28日掲載の動画と、3月9日掲載の静止画をご参照ください)
三脚にビデオカメラをセットして、だいたいの方角に向けて録画を始め、水平線に目を凝らす。先に見つけたのは妻、「あ、あれじゃない?」水平線で一瞬オレンジ色の点が輝く。そちらへカメラを向ける。数秒後もう一度、短時間光って消える。公開したムービーに写っているのはこの2度目の閃光から。種子島上空の雲のせいで見え隠れしているらしい。やがて雲を抜けて、それからはロケットの光が上昇してゆくのがきれいに見えました。地上の近くはもう日が沈んでいるので、はじめのうち噴煙は灰色でよく見えません。上昇に伴い、夕日を浴びる高度では噴煙がオレンジ色に染まり、それより上では白色になり、美しい虹色のような噴煙が見られました。
さて、私はビデオカメラを初めのフレーミングのまま放置して、あとは肉眼で堪能しつつ、フィルムカメラでも撮影していました。公開したムービーの第1カットでロケットが上から出ていってしまっているのはそのせいです。妻がそれに気が付いて、追跡しながら後半のムービーを撮影してくれました。ムービーのテロップや(C)表記は私の名前で公開していますが、ブースターの分離のあたりの感動的なシーンを撮影したのは彼女です。
もし75km先からでも音が聞こえるなら、単純に音速340m/sで概算すると、3分40秒後のはずです。・・・その時間に耳をすましてみましたが、波の音もあり、よくわかりませんでした。
後でほかの人の話を読むと、鹿児島からもフェアリング分離や1・2段分離まで見えたそうなのですが、その前に肉眼でほとんど見えなくなったあたりで撮影をやめ、しかも寒いので車に戻り、18時40分ごろ帰路につきました。(これで妻に風邪をひかせてしまいました)
【ネッピー館に救われる】
来た道を戻りながら「泊まるところどうしよう?」…無計画。
17時打ち上げのつもりで、それから引き返すことを考えていたので、リストアップしておいたホテルは、垂水や桜島のあたり。いまからそこまで戻ると21時頃になり、食事に困ることが予想されます。一応、メモしてきたホテルに電話してみようと思いましたが、携帯が圏外で使えませんでした。佐多町の中心地を通るときに、旅館を見かけましたが、外から見て営業しているんだかどうか怪しい感じ。それに小さい旅館や民宿だと、飛び込みで泊まったとして、料理の準備ができない可能性も心配でした。
19時30分ごろ、道の駅根占にたどり着き、メモしてきた垂水のホテルに電話してみるとなんと満室、がーん! そこで、妻と手分けして、道の駅に置いてある観光パンフレットで宿泊施設を探し、ねじめ温泉・ネッピー館に電話して、宿泊も食事もOKとわかりました。ネッピー館へ向かう道々「ネッピーありがとう。さっきは名前をからかってごめんね。」と二人で反省。
それから10分ほどでネッピー館に到着、チェックイン。町営の大きな温泉保養施設で、なかなか新しくてきれい。26日は「フロの日」で何かあるらしく、地元の方もたくさん入浴に訪れて賑わっていました。宿泊客は少ないようでした。宿泊は洋室のツイン、かなり広くてきれい、そして安価。「やっぱり、ネッピーごめんよ。バカにして俺(私)が悪かったよ。」
食事は、宿泊とセットの料理は予約しないと準備できないとのことですが、付属のレストランで定食の注文ならできました。ブリのあら炊き定食と、薩摩黒豚とんかつ定食をたのんで、二人で半分こずつしました。
その夜のニュースをTVで見て、MTSAT-1Rが無事にGTOに投入されたことを知りました。
(完)
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