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2004年7月 2日 (金曜日)

Cassiniの土星周回軌道投入は減速か加速か?

自分もちょっと前に、ふと疑問に思い、答えを考えた後だったので、今日学生に聞かれても、即答できた。
答えと、大雑把な考え方は以下の通り。

土星中心座標から見ると減速
無限遠から双曲線軌道で進入してくる探査機を、近土点で減速させ、遠土点を土星の影響圏内に下ろす操作である。

太陽中心座標から見ると加速
地球周りの人工衛星の知識がある人なら、静止衛星がGTOの遠地点でアポジ・キックしてGEOに入るのと相似と思えば分かりやすいだろう。
簡単のため、土星の引力は無視して単純なホーマン軌道で説明してみよう。近日点が地球軌道と接し、遠日点が土星軌道と接する楕円軌道で土星へむかう。この遠日点での探査機の速度は、土星の公転速度より遅いから、土星の前方から土星に追いつかれるような形で接近してゆく。この速度差のぶんだけ加速して、土星と速度を合わせるのである。そうしないとまた近日点の地球軌道まで落ちてくる。(注:通常はホーマン軌道より遠日点が遠く、より速い軌道を使うが、場合によっては土星軌道を横切るときの速度が土星の公転速度より速く、太陽中心座標からみても減速になる可能性もある。)

「のぞみ」や「はやぶさ」も、同様です。
なお、水星や金星の周回探査機なら、出発時が[地球から見て加速/太陽から見て減速]、到着時が[惑星から見ても太陽から見ても減速]ですね。

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コメント

興味深く読みました。宇宙「飛行士」の話もそうですが、どんな言葉も相手の視点や理解によって、伝わる意味が異なる可能性を秘めていますね。

件のSpaceShipOne試験飛行の際も、大気圏を脱したみたいな表現の報道をみかけ、事実に基づく定義付けが正しいのか、はたまたマスによる印象から導いた認識が正しいのか、判らなくなっちゃいました(苦笑)。

投稿: DPR-Japan | 2004年7月 7日 (水曜日) 10:05

コメントありがとうございます。

「宇宙飛行士」の件については、言葉の定義はそうだとしても、秋山氏が宇宙へ行ったという事実すら忘れられそうな現状を憂います。これは個人的な印象ですが、NHKやJAXAの報道姿勢はむしろ国民が秋山氏を忘れるように仕向けているようにすら感じます。
秋山氏も毛利氏も好きです。それぞれの業績を公平に伝えてほしいものです。

SpaceShipOneについて、いつかまとまった感想を書こうと思っているのですが、ひとこと「目的を絞った美しい設計」だと思いました。

投稿: ごんざぶろう | 2004年7月 7日 (水曜日) 19:43

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